2018年春から在宅診療を中心にする目白すずきクリニックを開設致しました。
病院勤務をしていたころの話です。
主治医をしていた入院患者さんがあるとき亡くなりました。数十年間病院の天井を見続けていた、意識のない患者さんでした。患者さんのお母様とは回診の際にはよくお会いしました。もう意識は戻らないと言う医師たちの説明をなんども聞き納得していたようでお母様はいつも穏やかでした。
ご葬儀もおわったころ、お悔やみにご自宅に伺いました。
お宅に入ると、はじめてみる笑顔の患者さんの写真が目に飛び込みました。お部屋はきれいに掃除され、「ずっと娘さんの帰宅を待ち続けていらっしゃったのだ。」とお母様の気持ちを目の当たりにして言葉を失いました。
しかし、「どんな状況であっても、この子が生きていることが私の支えでした。ありがとうございました。」という患者さんのお母様の言葉は私にとって忘れられないものとなりました。
その後、時を経て、訪問診療にたずさわるようになりました。
あたたかいご家族にみまもられながら、リハビリにとりくまれる方、仲のよかった奥様に先立たれてしまった方、誰にもお世話を頼めず自宅でゴミに埋もれていた方、天涯孤独の認知症で寝たきりの方、24時間のヘルパーさんや看護師さんとの連携が必要な方、車いすで一人暮らしの方。患者さんの中には、様々な方がいらっしゃいます。
患者さんたちのご自宅でお人柄や生活にわずかながらふれることで、より深く納得して頂ける医療ができることを、日々教えていただいております。そこには経済的なことだけでは解決できないものもあります。
患者さん、そしてご家族のお気持ちによりそえる診療を心がけております。
どうぞどんなことでも、お気軽にご相談下さい。